MYITTAの工房

日々のくらしや手作り、ときどきミャンマー

カテゴリ:ミャンマー生活 > くらしの中の伝統美

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かつてのビルマシルクの情報を教えてくれるお気に入りの本があります。

1901年にビルマ政府から発行された英語の本です。著者はJ.P.Hardimanという方です。

当時のビルマでのシルク産業についてまとめられていて、カイコの育成から糸の作り方、機織り機の様子、代表的な装飾紋様、値段などが紹介されています。

ところどころ、水彩画のような絵があるのですが、これがとても味があります。

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代表的な織紋様も描かれています。

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この本はハードカバーですが、恐らく最版か、ミャンマーによくあるコピー製本版だと思います。

でも古き良き時代の雰囲気に癒される一冊となっていて、まだ熟読は出来ていませんが、時折手にとり楽しんでいます。



ずっと娘に見せたいと思っていたミャンマー伝統のマリオネット、先日初めてヤンゴンでの実演を見ることができました。

日本大使館などの後援で開かれたこの日の日緬人形劇交流事業は、前半が世界無形文化財である日本の文楽の実演と紹介、後半がミャンマーのマリオネットという構成。場所がChin Chaung Palaceという文化財建築で、普段入れないところということも楽しみの一つでした。実際には、その横の小さな建物が会場で、お目当ての建築ではなかったのですが…

文楽もミャンマーマリオネットも、とても実演、解説ともになかなか充実していて楽しめる体験となりました。

とくに、文楽を生で見るのが初めてだった私には、思いの外、文楽について勉強になりました。有名なあの『お七』からの抜粋では、何と言ってもあの緊張感と太夫、三味線奏者、人形遣いの方々の呼吸、職人技がまさに芸術で、いつの間にかすっかり惹き込まれてしまいました。

娘には、牧歌的な音楽や動物や鬼が登場したミャンマーパペットのほうが面白かったそうですが、両者は、なんというか、国民性の違いまで表しているように感じます。

あのわずか一瞬の文楽でも示された圧倒的な緊張感の美というのは、日本的というか、やはり日本人が好むものであり、日本人が求める芸術なのだと思います。

と、この日はヤンゴンにいるのに(いるからこそ?)日本文化のインパクトが強すぎたので、またの機会にはミャンマーマリオネットだけをゆっくり鑑賞してみたいところです。

もちろん娘には両方とも良い初体験となったみたいでした。

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ミャンマー衣装のブラウスのボタン部分によく使われる紐結び装飾に、花モチーフのものがあります。ミャンマー語でパン トウ デー〔花編み〕というこの花飾りは一つ一つ手作りのため、手芸パーツとしてはヤンゴンでもなかなか高いのです。

それを嘆いていたら、メティラーに住む親類がパントウデーを作れるという情報が!そのおばあちゃんは、伝統の手仕事を前から人に教えたがっているのですが、若い人は誰もやりたがらないと残念がっているというのです。そこで早速その手仕事を教えてもらいに行きました。

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65歳でも快活で芯の強い眼差しのおばあちゃん。挨拶も早々にすぐに作業が始まり、手仕事好きな者同士、言葉の壁も暑さも忘れて熱中しました。

まずは紐作り。生地の目に対し45度斜めに細長くカットした布にミシンをかけて裏返し、細い紐を作るのは、くるみボタンをとめるときのループ紐の作り方と同じです。

この紐を使って、花飾りを花びら一枚づつ針と糸で留めながら形作っていきます。花びらは一重から三重、数は5、6枚が美しいのだそう。菊やジャスミン、バラ、葉などの作り方を教わりました。

少し難しいのは、ボタンになるボール状の部分の結び方。先端がかなり長めのピンセットのような道具を使い、結びながら締めながら玉を作っていきます。これは日本のオリエンタル紐飾りの作り方の本にも出ているかもしれません。

おばあちゃんはテイラーから頼まれ、依頼されたブラウスの共布を使ってパントウデーを作り、縫い付けて仕上げています。年々作れる人が減り、今パントウデーが作れるのはメティラーではこのおばあちゃんだけになったそう。もったいない!
次回もまた違うテクニックを習う約束をしました。

毎回一点物のデザインが出来上がる楽しみ。ボタン飾り以外にもいろいろと応用できそうです。

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おばあちゃんのミシンコーナー。雑貨がいろいろあって楽しい。



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今回の自宅へのおみやげは・・・

縁起もののフクロウの人形。玄関などに一対置くのがミャンマーの流です。
竹で編んだフレームに新聞紙をはり、色を付けた伝統工芸。
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ずっと欲しかった、素朴な陶器の花瓶。
メティッラーあたりでは最もポピュラーなデザインです。ひとつ18円くらい。
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そしてやはり選んでしまうのはカチン族の織物。
なんてモダンなデザイン!
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これらは我が家に飾っているチークの木彫りの壁掛けです。土産物用に作られた手頃な作品ですが、堅いチークですので、彫刻にはなかなか手のかかるものです。

ミャンマーでは、家具ばかりでなく、寺院や宮殿などの建築への木彫による装飾が盛んに行われてきました。堅固で長持ちする良質のチーク材を多く産出する国ですので、チーク材による木彫装飾は当たり前のようになっていますが、極めて優れた手仕事による伝統技術の一つです。
この伝統の技を大切にまもっていってほしいものです。

ヤンゴンの国立博物館のミュージアムショップで見つけたコットン製のブランケットです。
畳一畳ほどの大きさで、コットンなのでラグにもなりそうなしっかりとした手触り。
こんなにシックな赤いデザインはあまり見たことがなかったので、気に入ってしまいました。
確か、カレン族のものだと聞きました。
ロンジーの布もそうなのですが、私が気に入ってしまうのは、どうもカレンのデザインが多いようです。

写真 (1)

民主化プロセスが急ピッチで進められているミャンマー。
久しぶりに訪れた主人の故郷メティッラーは、政治的な変化の影響はほとんど感じられない、今までと変わらぬ街の景色がひろがっていた。多分、庶民の多くは、諸外国で盛んに報じられている政治的な方針転換にはあまり関心がないように見える。

それでも、やや新しい車が走っている姿を目にしたり、プリントTシャツにジーンズ姿の若者が増えたり、TVや広告に韓流の風が見えたり、といった変化は見える。

そして馬車の数が減った。

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馬車は渋滞を引き起こしたり、排泄物の問題もあって、しばらく前から馬車専用の測道を通らなければならない区間も多くなった。馬車用の道は舗装されていないところも多く、でこぼこで土煙がひどいし、遅い。値段は安いが、不便さは否めず、今では乗る人がめっきり減ったという。おそらく、娘が次に来るころには一段と減っていることだろう。

だから、今回は娘と馬車に乗ってみた。主人が道でひろったのは、毛並みが美しい3歳の若い馬がひく馬車だった。手綱をひくのも若者だ。近頃、めっきり乗客が少なくなって、ぜんぜん儲けがないという。案の定、揺れるし、ほこり臭いし、遅い。でも、景色がよく見えるし、街の匂いもわかるし、ほんとに楽しかった。

家まで20分ほどの道のりで、50円ほど。
そのうち、観光用の馬車しかなくなると3000円くらいにはなるのだろうか。

マンダレーやパガンの特産品である漆の工芸品。なかでも、どうしても目を奪われてしまうのが、蒟醤(きんま)細工による漆の器たちです。濃い地の色に、朱などの鮮やかな色で隙間を埋め尽くすように刻まれた線画は、気の遠くなるような手仕事による逸品です。

作り方を大雑把にいうと、まず細い竹を巻いてつくった素地に、幾重にも漆を重ねます。黒い漆の表面に溝を掘るように線画を刻み、そこに色を埋め込んでゆくのですが、この工程を色の数だけ繰り返すのです。埋め込まれる色には朱や緑、青など様々。現代のバガンの漆学校の作品では、かなり鮮やかな色を多色使いした作品もありましたが、個人的には黒地に朱色のみで作られたものが好きで、我が家にはこれがたくさんあります。

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蒟醤技法の歴史は相当旧く、パガン時代には遡れるでしょう。なんと室町時代には日本にももたらされ、現在日本では、香川県の重要無形文化財として、さらに洗練された技となって息づいています。ミャンマー人でもそんな誇るべき歴史を知らない人が多いようですから、もったいないことです。はるか昔の人とモノと技術の交流に思いを馳せて、感銘を受けずにはいられません。

ミャンマーを代表するシルク織物の産地アマラプラでは、100のシャトルで織るものを意味するルンタヤと呼ばれる、波模様や花の模様をあしらった織物が有名です。

その名の通り、さまざまな色や模様を実現するために、たくさんのシャトルを並べて、手作業で模様が織られています。

かつて宮廷衣装用に培われてきたこの織物は、現在では結婚式や正装用の衣装に使われています。

伝統的な波の模様や花の模様のほかに、現在ではそれらをアレンジしたさまざまな色とデザインが作られていますが、最近では、光る素材が人気とのことで、銀糸を織り込んだり、ラメで縁取りをした華やかなデザインのものも多いそうです。

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DSC_0014ミャンマーでは、食器や物入れなど、多くの見事な漆の工芸品があります。

ミャンマー語でyunと呼ばれるこれらの漆工芸の歴史はバガン王朝の頃にまで遡るといわれます。

シンプルな黒や朱色の単色のものから、青や朱、緑、黄色などの色が埋め込まれた細かい装飾のあるもの、立体的な模様や金彩のある華やかなものまで、色や種類は用途や地域により、さまざまです。

本体には、竹や木材が用いられ、その上に幾重にも漆を重ねて作られています。

ここでは、我が家にある品について紹介します。


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左のものは、ミャンマーの漆を代表する壺状の器。ご飯を入れるためのもので、上の塔状の部分が蓋になっている。













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上はやはりご飯などを何種類か入れるためのもので、中に何枚かの皿が収納されている。表面の装飾の一部は、立体的なモデリングが施された手の込んだ作品。


DSC_0047左の筒状のものは、書面を運ぶ際に巻物状に収納した入れ物。



DSC_0036竹をくりぬいて作られており、写真のように、端部が蓋となっている。












DSC_0033左は硯箱のような方形の箱。










女性用のロンジーであるタメインの布には、さまざまな色や模様がある。生地は、伝統的なシルクやコットンのほかに、最近では化繊も少なくないが、国土の大半はなんといっても暑いお国柄、コットンが主流だ。女性たちは気に入った布を選んで服を仕立ててもらい、おしゃれを楽しむ。既製品はほとんどないので、通常オーダーメードになる。

固有の伝統をまもる国境周辺の少数民族の布は別として(民族調という意味ではこちらのほうが関心がもたれやすいが)、マンダレーやヤンゴンなど、大都市の布のマーケットでは、プリントものやタイからの影響の強い模様の布などもあり、さらに毎年流行の新柄も売り出される。

上下お揃いの伝統的なお洒落着では、コットンの布地にかわいらしい花やひし形の模様が織り込まれているものが多い。

このような模様は、模様の部分の横糸に模様の色の糸を足して織っている。上下一着分の布地ごとにつくられる一反の布には、あらかじめブラウス用とスカート用の模様が織り分けられており、タメインの正面にもっとも華やかな模様がくるようにデザインされている。

とはいえ、大きな都市では、若者はジーンズにTシャツといういでたちが主流になりつつある。顔立ちがミャンマー人そっくりな私が、主人の実家であつらえてもらったビルマ服を着て生地のマーケットをうろつくと、よく地方から来た生地のバイヤーと間違われ、今年はこの模様が流行よ、あなたどこから出てきたの、とビルマ語で声をかけられる。


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布を使ったミャンマー(ビルマ)の工芸品の中でも際立つのが、シュエジードー。'金の糸で縫う'を意味するシュエジードーは、ベルベットの地に、ビーズやスパンコール、金糸、銀糸を使い、立体的な刺繍やアップリケを施し、模様や図像を表現する。

シュエジードーの技法で作られたものとしては、カラガと呼ばれるタペストリーが有名で、その歴史は17世紀にもさかのぼる。伝統的に寺院におさめられたカラガは、仏教説話をモチーフにしたものが多かった。

ほかにも、宮廷や人形芝居の衣装にもシュエジードーの技術が用いられてきた。

制作に大変な根気を要するシュエジードーは、英国支配以降に次第に廃れていったが、20世紀後半になって再興される。

現在では、マンダレー近郊で生産され、服用の布やタペストリーのほか、バッグや小物入れ、財布など土産物としても大変人気がある。

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かつて宮廷衣装や結婚式などの正装用に盛んに用いられたシルクだが、最近は生産が減少している。コットンの織物生産に転向したり、化繊の大量生産化の傾向にあるらしい。

現在もシルクの生産を続けているのは、おもにマンダレー近郊のアマラプラ、インレー湖近郊など。このうち、アマラプラは生産の中心である。

その代表的な模様は、波状の模様が水平に並ぶルンタヤ・チェイ(lun-taya acheik)。ビルマ語でルンタヤは「100のシャトルで織る」を意味し、チェイ(アチェクと読む人もいる)は波状の模様の名前。最近では、波の模様と花や植物の連続模様が交互に水平に配されたデザインが多い。

織り上げるのに大変な手間のかかるこの織物は大変高価で、かつては宮廷用に作られていたものだった。現在でもこの模様のシルク生地は、結婚式の衣装などに用いられている。

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ミャンマー(ビルマ)の布にはいろいろな種類がある。

なかでも最も生活に欠かせないのは、毎日身につける服、とくに巻きスカートタイプの布、ロンジーである。

男性のものはパソー、女性用はタメインというその布の着方は、筒状に縫っただけの布を、お腹あたりできゅっと結ぶだけ。これが熟練していないとなかなか難しく、慣れたビルマ人でさえもよく結びなおしている。

最近では、女性用のロンジーはあらかじめダーツが入って立体的に縫いあげられ、3段階くらいにきつさを調節できるホックで簡単に留められるようにすることが多い。

女性の伝統的な服装は、上下共布でつくられたツーピース。お土産用などの例外を除いて、通常オーダーメイドで作られ、さまざまな色や模様を楽しむ。布は、スカート部分専用のもののほかに、上下のセットを作るための模様をあらかじめ考慮した配置で織られているものとがある。

普段着のロンジーの布はしっかりとした綿やウール製だが、晴れの機会には、シルクもまとう。

知人同士の気軽な手土産としても、このロンジーの布は重宝する。

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ミャンマーを歩いていると、街でもどこでも、人が通る道端などには、よく水瓶が置いてある。

中には飲み水とひしゃくが入れてあり、誰もが喉を潤すことができるように、その水瓶を置いている家屋の主人がいつも管理しているものだ。

旅人を思いやるこのような習慣は、中東や地中海沿岸でも見たことがある。

素焼きの瓶に入れられた水は、いつでもなぜか冷たくて、おいしい。

写真は、とある食堂で見かけた水瓶。真赤な蓋がとても美しかった。

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周辺のアジアの国々からの影響ばかりでなく、イギリス統治時代からの名残りもみられるミャンマー(ビルマ)は、多様な文化の香りをまとっている。

ミャンマー人は自国の民族文化に強い誇りをもち、古くからの伝統を日々の暮らしの中で守っているようだ。


とくに、国民の約90パーセントが敬虔な仏教徒であるこの国では、生活に息づく伝統の多くが仏教と密接にかかわっている。

一日の多くの時間を寺院での祈りに費やすミャンマー人の技術と意識は、見事な仏教建築を生み、仏伝のための彫刻、絵画を花開かせた。

静かに豊かな笑みをたたえる彼らの手仕事はまた、漆器や布に美を与えている。
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