マンダレーやパガンの特産品である漆の工芸品。なかでも、どうしても目を奪われてしまうのが、蒟醤(きんま)細工による漆の器たちです。濃い地の色に、朱などの鮮やかな色で隙間を埋め尽くすように刻まれた線画は、気の遠くなるような手仕事による逸品です。

作り方を大雑把にいうと、まず細い竹を巻いてつくった素地に、幾重にも漆を重ねます。黒い漆の表面に溝を掘るように線画を刻み、そこに色を埋め込んでゆくのですが、この工程を色の数だけ繰り返すのです。埋め込まれる色には朱や緑、青など様々。現代のバガンの漆学校の作品では、かなり鮮やかな色を多色使いした作品もありましたが、個人的には黒地に朱色のみで作られたものが好きで、我が家にはこれがたくさんあります。

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蒟醤技法の歴史は相当旧く、パガン時代には遡れるでしょう。なんと室町時代には日本にももたらされ、現在日本では、香川県の重要無形文化財として、さらに洗練された技となって息づいています。ミャンマー人でもそんな誇るべき歴史を知らない人が多いようですから、もったいないことです。はるか昔の人とモノと技術の交流に思いを馳せて、感銘を受けずにはいられません。

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